2019年1月1日施行の著作権法改正の解説

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2019年1月1日施行の著作権法改正の解説

「著作権法の一部を改正する法律」は、平成30年5月25日に公布されました。この法律は
・情報通信技術の進展等に対応し,著作権者の許諾を受ける必要がある行為の範囲を見直し,著作物の利用を円滑に行うことができるようにする
・「盲人,視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約」の実施に伴う規定の整備を行う
というものです。

改正内容としては次の4つが挙げられます。
① デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定の整備
② 教育の情報化に対応した権利制限規定の整備
③ 障害者の情報アクセス機会の充実に係る権利制限規定の整備
④ アーカイブの利活用促進に関する権利制限規定の整備等

■デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定の整備
かつての著作権法は、著作権者の許諾無く利用できる場合に関する規定(権利制限規定)
を利用の目的や場面ごとに一定程度具体的に規定しています。そのため、類似の行為であっても、対応する規定がないため、形式的には違法となってしまうのです。
そこで、柔軟な権利制限規定の整備が行われることとなりました。

・権利者の利益を通常害さない行為類型(30条の4、47条の4)
著作物に表現した思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる類型です。
著作物の利用にかかる技術開発・実用化の試験、情報解析、その他人の知覚による認識を伴わない利用などがあります。
・権利者に及ぶ不利益が軽微な行為類型(47条の5)
新たな知見又は情報を創出する行為を行う者において、必要と認められる限度において、方法を問わずに軽微な利用を行うことができる類型です。
所在検索サービス、情報解析サービス等があります。

■教育の情報化に対応した権利制限規定の整備(35条等に関係する部分)
教育機関の授業における著作物の利用は
① 対面授業のために複製すること
② 対面授業で複製等したものを同時中継の遠隔合同授業のために公衆送信すること
については、著作権の権利制限規定(第35条)により、無許諾で可能となっています。
一方で、その他の公衆送信は権利者の許諾が必要となっており、教育関係者から、権利処理の煩雑さなどから、学校等におけるICTを活用した教育において教育上必要な著作物が円滑に利用できていないとして、著作権制度等の見直しを求める声がありました。

そこで、教育機関の授業の過程における公衆送信による著作物の利用を広く権利制限の対象として、無許諾で行うことが可能となりました。
一方で、改正によって新たに無許諾で利用が可能となる公衆送信について一元的な窓口への補償金の支払いをもとめるという形をとっています。

■障害者の情報アクセス機会の充実に係る権利制限規定の整備
かつての著作権法においては、視覚障害者等のための書籍の音訳等は、権利制限規定により、権利者の許諾がなくても行うことが可能となっていました(37条)。
改正においては、上記のマラケシュ条約に対応して、肢体不自由のために書籍を保持しページをめくれない人など、障害によって書籍を読むことが困難な者が広く対象となり、権利者の許諾なく行うことができるようになりました。

■アーカイブの利活用促進に関する権利制限規定の整備等
・作品の展示に伴う美術・写真の著作物の利用(47条)
・著作権者不明等著作物の裁定制度の見直し(67条)
・国立国会図書館による介護区の図書館への絶版等資料の送信(31条)

弁護士水野博之は神奈川県横浜市を中心に皆様の法律に関する問題の解決をご支援させていただいております。ご自身の著作物に関するトラブルなどについては当事務所までお気軽にご相談ください。お電話、メールでの相談も受け付けております。お悩みの際は当事務所の弁護士水野博之までお気軽にご連絡ください。

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